5月31日は火星大接近の日でした。西はりま天文台の夜は晴れ渡り、絶好の観望会のはずでしたが、生憎の上空の空気の流れ(風)が強く、火星は揺らいでいました。でも白い極冠は確認することができました。肉眼で見た火星は、南東の夜空に異様に赤く大きく耀いていました。
火星の公転周期は780日(2年2ヵ月)ですので、2018年7月31日にも、火星大接近があります。この時は、今年の大接近よりも更に近づきます。今から楽しみです。2年2ヵ月ごとに接近する距離が変化するのは、地球は太陽を中心として円に近い公転軌道をとるのに対し、火星は少しつぶれた楕円軌道をとるためです。最も離れた接近と、最も近づいた接近とでは、距離にして約2倍、従って大きさでは4倍と大きく変化します。
火星は、地球型惑星で昔から話題の多い惑星です。赤い色は酸化鉄、即ち赤錆です。大気は炭酸ガスと窒素が殆どで、地表での圧力(大気圧)は地球の1%にも満たないわずかなものです。昔は海もあり、火山活動もありました。火星の火山で有名なのは「オリンポス」です。オリンポスは、実は太陽系で一番大きな火山で、高さが27,000m、すそ野は550kmにも広がっています。山頂のカルデラも大変大きく、富士山がすっぽり入ってしまうほどです。火星に、何故このような大きな火山ができたかについては、地球で活発なプレートの活動が、火星ではないことが理由として考えられています。
現在も火星の地面を「オポテュニティ」が走り廻っていますが、これまで火星への探査機は計画中断も含めると、全世界で50回以上の行われています。ただこのうち2/3が失敗とされています。このため火星探査は不吉と考える人もいるようです。でも火星探査の効果は絶大で、上述のオリンポスも、地上の望遠鏡では白い塊としか見えなかったものが、壮大な画像で見られるようになりました。また、NASAは2009年1月に、火星の氷の割れ目からメタンが大量に噴出していると発表しました。火星はこれから、ますます目がはませなくなります。最終的には火星有人飛行ですが、アメリカは2030年代の計画を立てているようです。問題は地球-火星間の距離で、現在の衛星技術では片道、1年半ほど必要と考えられています。このため、必要な物資や乗組員のメンタル面等、解決しなければならない問題は山のようにあるとのことです。ちなみに、アポロ宇宙船は地球-月の間を3日半で飛行しました。
下の図は、ハッブル宇宙望遠鏡で見た「火星」です。NASA提供の画像を wikipedia から引用しました。宇宙望遠鏡とは望遠鏡を搭載した人工衛星を打ち上げ、地球の周回軌道から空気の影響を受けないで観察できる望遠鏡のことです。図の上下に見える白い部分が「極冠」で水や二酸化炭素(炭酸ガス)の氷です。
最後に、最近アメリカ人、アンディ・ウィアーのSF小説「火星の人」(小野田和子訳、早川文庫)を読みました。映画「オデッセイ」の原作小説です。宇宙のSFと言うと「スター・トレック」にあるようなまがまがしいものが多いですが、「火星の人」はSFの「S」に重きを置いた物語で、大変面白く読めました。
コメント
コメント一覧 (1件)
私も素人天文ファンなので、火星情報楽しく読ませていただきました。「火星の人
私も読み、友人たちに回覧、好評でした。映画よりほんの方が面白いですね。映画では、クレーターで転覆するシーンなどかなりの面白いシーンが抜けているのがちょっと不満でした。
金星の「あかつき」、木星の「ジュノー」などの探査機のこれからの活躍も教えてください。