昨年10月に木星についての記事を投稿しました。
その最後に「今話題になっているのは木星の衛星です」と書きました。今回はその衛星についての記事です。
木星には、今のところ67個の衛星があります。地球では「月」が唯一の衛星ですから、様子が全く異なります。今のところという意味は、将来に新しく衛星が発見されるかも知れないという意味です。これだけ多くの衛星があるのですが、「イオ」「エウロパ」「ガニメデ」「カリスト」と名付けられた4つの衛星が特に大きく、地球の月と同程度のサイズです。他の多くの衛星は上記の4つの衛星に比べるとかなり小さいです。これら4つの衛星は、ガリレオが望遠鏡を発明してすぐに見つけた衛星で、4つをまとめて「ガリレオ衛星」と呼ばれています。衛星(月)が4つもあるのなら、夜空は明るく、ややこしいと考えられるかもしれませんが、そんなことはありません。前の記事でも書きましたが、木星の大きさは地球の11倍です。したがって、木星から見たガリレオ衛星の大きさは、1/50程ですし、太陽からかなり離れていますので、地球の月のような輝きはありません。木星から見ると大きな星が光ってるといった状態でしょうか。
前置きが長くなりました。今話題になっているのはガリレオ衛星のうち「イオ」と「エウロパ」です。惑星探査機や、宇宙望遠鏡からの観察で、「イオには火山活動」が、「エウロパには氷(水)の噴出」が見つかっています。この意味で「生きている」衛星としました。
1.イオの火山活動
イオに火山があると初めて観測したのは地上からの赤外線望遠鏡によるものでしたが、1979年惑星探査機「ボイジャー1号機」がイオに接近し、二つのプルーム(噴煙)を見つけました。その後、ボイジャー、ガリレオ、カッシーニ、ニューホライズンズ等の惑星探査機によるフライバイ(惑星やその衛星に接近すること)や地上からの観測ににより、多くの活火山が確認され、現在では400個ほどの火山があると推測されています。このためイオは太陽系内で最も火山活動の多い天体と考えられています。また、2013年8月15日と29日には、ハワイ島マウナケア山にあるケック望遠鏡がイオの大噴火を観測しました。
2.エウロパの氷(水)噴出
NASA(米航空宇宙局)は2016年10月26日、木星の衛星エウロパを覆う氷の表面から、水とみられるものが高さ200kmまで噴き出しているのをハッブル宇宙望遠鏡で観測したと発表しました。液体の水がある環境は生物が存在できる可能性があるとされ、生物探しの手掛かりになりそうです。エウロパの表面にある厚さ数キロの氷の下には、深さ数十キロの海が広がっていると推測され、氷を掘らなくても噴き出す水を採取できれば、有機物や生物の痕跡が見つけられるかもしれないと考えられています。観測チームは木星の前を横切るエウロパを観測し、南極付近から細長い影が突き出しているのを発見し、影が吸収する光の特徴から水だと推定しました。
水かどうかは2018年に打ち上げるジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡による観測で確定させるとしています。
3.熱源
火山活動や、氷(水)の噴出の熱はどこから来るのでしょう。それは地球にもある「潮汐力による衛星の内部物質(岩石や氷)のマサツ熱」と考えられています。イオやエウロパの公転軌道は、木星を中心とした完全な円軌道ではなく、僅かですがずれた楕円軌道になっています。このため、衛星には木星に近い点と遠い点があり、この距離の差による引力の差から潮汐力が生じます。地球と月の潮汐力による「大潮等」と同じ原理です。加えて、衛星同士の公転軌道がほぼ整数倍になっている(共鳴と呼ばれています)ため、衛星同士が近づいた時は常にほぼ同じ部分に引力が働くことになり、これも潮汐力に影響します。
地球の場合、潮汐力による海面の盛り上がりは1~2m程度、陸地(岩石)の移動は1cm程度ですが、木星の衛星では、木星が非常に大きいため、引力が強く潮汐力によるふくらみは100mにも達するそうです。
しかも、イオやエウロパの公転周期は、それぞれ1.7日と3.6日と地球の月に比べて非常に短いです。従って数日ごとに「膨らむ⟷しぼむ」を繰り返していますので、摩擦熱の蓄積が大きく、火山活動や氷(水)の噴出の熱源として十分機能すると考えられています。実際、ガリレオ探査機の磁力計データの解析から、イオの地殻下には50km以上のマグマの海があること考えられています。
コメント
コメント一覧 (1件)
今まで、地球の内部はなぜ高温なんだろう、火の塊なんだろうと不思議に思っていましたが、潮汐力の原理を聞いて納得。また、温泉もなくならないのも納得。