(福田 文治 様 平成28年6月14日)
紫陽花の美しい時期となりました。お元気で音楽や文化活動にお励みのことと拝察いたします。
さて5月26日尼崎アルカイックホールでのグリーン交響楽団のSpring Concertに行ってきました。白谷隆さんの繊細かつダイナミックな指揮によるハイレベルのグリーン響が演奏するプログラムの各曲を聞きながらいろいろな思い出や連想が湧き出てきて、楽しいひと時でした。それらを書きます。
- ワーグナー 楽劇「ニュールンベルグのマイスタージンガー」前奏曲
この楽劇はNY勤務時、1970年と思いますがニューヨークメトロポリタン歌劇場の正面前列席で観ました。ワーグナーの楽劇は初めてで歌詞はドイツ語でしたがリブレットの概略は英訳されたものがありましたし、ワーグナーには珍しく快活な喜劇でしたので結構楽しみました。前奏曲も物語にぴったりの勇壮なもので、元気づけてくれます。NY時代に買ったLPレコードWagner’s Greatest Hits(A面1曲目:フリッツライナー指揮シカゴ交響楽団演奏のDie Meistersinger: Prelude to Act1 )はCDやYouTubeでは味わえない華麗な色彩感あふれる演奏を楽しめるので今でも時々聴いています。
また昭和63年息子の慶応大学の入学式に参列した際、式の冒頭に同学ワグネルソサイエティオーケストラがこの曲を演奏し感動しました。若し3年後に元気ならば、現在慶応高校1年の孫の慶大入学式に再び参列してこの曲を聞きたいものと思っています。また孫は普通部(中学)時代から現在もクラリネットを習っており、出来得れば慶大ワグネルソサイエティオーケストラに入り後輩達のために入学式でこの曲を演奏してほしいなあというのがジージの夢です。
慶応大学ワグネルソサイエティオーケストラは1901年創立の日本最古のアマチュア学生音楽団体です。ドイツの作曲家リヒアルト・ワーグナーに因んで名づけられ、ワーグナーの伝統に縛られない自由な発想、開拓者精神、先進性といった理想が込められていると聞いています。
ワグネルソサイエティ男性合唱団は昭和28年8月小樽の花園小学校講堂で演奏会を行いました。その準備や入場券の販売などは小樽三田会の協力を得て帰省中の慶大生5/6人が行いました。演奏会で黒人霊歌「ジェリコの戦い」やジャズ風の「ブルームーン」を歌いました。合唱団の中にはダークダックスのマンガさんやパクさんがいたかもしれません。なお演奏会開催については小樽三田会の稲葉さん(色内町の鋼材問屋稲葉産業の社長)や慶大4年の佐藤さん(かま栄かまぼこ店の息子さん)には種々ご指導いただきました。 - ビゼー「アルルの女」組曲より
「アルルの女」と聞いて「ファランドール」のメロディーを思い出しました。その他「間奏曲」や「メヌエット」も色彩豊かな曲で、南仏の風景を想像しながら聞きました。そしてアンコール曲は確かビゼーの「カルメン間奏曲」だったと思いますが、カルメンといえば私が高校3年の時カルメンのアリアなどを得意とするアルト歌手・川崎静子さんが小樽に来て花園小学校の講堂でリサイタルを開き、私は父と一緒に聴きました。カルメンのセギディーリアやハバネラを歌いました。 - ドヴォルザーク 交響曲第8番ト長調
チェッコスロヴァキアの作曲家ドヴォルザークは9番の「新世界より」が最もポピュラーですが、第8交響曲はボヘミア地方の静寂な森やのどかな田園の雰囲気と民族舞曲や民謡などが織り交ざった雄大な明るい曲で楽しく聴きました。またこの交響曲は大好きなブラームスの交響曲に似ているように感じました。そしてアンコール曲にドヴォルザークの「ユーモレスク」という懐かしい曲で締めくくっていただきました。これも高校時代小樽の映画館で「ユーモレスク」という映画を見ました。確かニューヨークの下町育ちの少年が音楽学校でヴァイオリンの腕を磨き、初めてのリサイタルで「ユーモレスク」を弾き、批評家から「天才」の折り紙をつけられたという正にアメリカンドリームを描いた映画でした。私は1968年の秋カーネギーホールでチェコフィルハーモニーの「新世界より」を聴きました。カーネギーホールもチェッコフィルも初めてでしたが、驚いたことに会場前列の席はチェッコ国旗のバッジをつけたり小旗を持っていて明らかにチェッコ人に見えた20人くらいの老男女に占められていました。当時は東西冷戦下で故国チェッコはソ連支配下の東側陣営にあったため自由の国米国に住むチェッコ人は殊更故国の同胞に懐かしさと愛着をもってチェッコフィルの演ずる「新世界」交響曲を聴いていたのではないでしょうか。以上あちこち脱線しましたが、このコンサートは楽しい思い出の旅でもありました。
また6月5日には福田さんにご案内いただいた高槻現代劇場でのアンサンブルコスモリバティの演奏会に行ってきました。弦楽器のヴェテランばかりを揃えたユニークな室内オーケストラに導かれ日本➡チェコ➡イギリス➡オーストリア➡ドイツ➡日本と世界一周音楽の旅を楽しみました。どの曲も感銘を受けましたが、特にモーツアルト(オーストリア)の「おもちゃの交響曲」ではヴィオラ奏者8名の方々がステージ最前列に横に並び、それぞれ動物のお面をつけおもちゃの太鼓やラッパを演奏したのには驚きました。福田さんはその中央に立ちっぱなしで譜面をめくりながら太鼓の演奏をされましたが、福田さんのオケへの熱意と驚異的な体力には頭が下がります。
何時もながらいろいろな演奏会を楽しませていただき深謝します。
日増しに暑くなってきますが、どうかお体にお気を付け下さい。