初詣。日本のワンダーランドへ。

 今年も清々しい一年の門出を祝って、初詣は三福参りに行ってきました。

阪急ぐるっと初詣パスを買うと、沿線なら一日、どの駅でも自由に乗り降りできるほか、中山観音では招福吉祥飾紙、清荒神では招福箸、門戸厄神では破魔矢が頂けるという、ちょっぴり嬉しい福尽くし。

昔、小樽都通りの電気館前で、筵一枚の小店を広げ、香具師のおじさんが雑誌の付録やら五十円の靴やら、バナナのたたき売りよろしく売ってました。「さあ、ねえちゃん、買っていきや。三十三は女の厄年。三で死んだは三島のおせん!」。なんで厄年が出てくるのか分からないが、子どもながら、だみ声の名調子にうっとり聞き入っていた。あの雑踏の、なんともいえない猥雑な風の匂い。香具師のおじさんの暮らしの匂い。根っからの庶民派は、無類にこれが好き。寅さんが何で国民的映画で、人気があるのか分からなかったけれど、何ということはありません。一皮むけば、ルーツは己れの中にちゃんとありました。

まずは中山観音で招福吉祥飾紙を頂くと、おつ、という結構な重量感に手ごたえを感じた御一行、招福への熱い期待感が一気に燃え上がりました。一番の若手が今年厄年、年女還暦のお女中(職種ではありません。気分はすでに参詣にはしゃぐお江戸の庶民)で、総勢、老若男女の一二名。いつもの旅がらすというか、ウオークツアーの常連メンバー。

聞きなはれ。縁起によれば、北摂の地に、紫の雲たなびくといわれる中山寺は、聖徳太子によるわが国最初の観音霊場でございます。代々皇室の崇信あつく、安産祈願本邦随一の霊場として源頼朝をはじめ武家、庶民より深く信仰され、豊臣秀吉は当山に祈願して秀頼を授かり、現在の伽藍は、秀頼が片桐且元に命じ再建したもの。でございます。

知らんかった。そんなに由緒あるところとは。そういえば、寺の入り口では、安産腹帯さらしが、たんと売ってました。

親兄弟の顔が見たくば、中山寺の五百羅漢のお堂にござる。の五百羅漢像。山門から梅林~奥の院まで広がる敷地に建ち並ぶ大願塔、閻魔堂などの建築群。邪気を払う節分会。西国三十三か所の観音様が参集される八月九日にお参りすると、四万六千日参詣と同じ功徳が受けられるという星下り大会会など数多くの年中行事―今様にいえば、神社仏閣とは、まさしく江戸庶民が、春夏秋冬遊ぶワンダーランドだったのでしょう。ハリーポッターで人気を高めたユニバーサル・スタジオ・ジャパンだって顔負けのテーマパークだったのではありませんか。

でも、このテーマパーク、嘘をつくと閻魔大王に舌を抜かれるぞ、と親は子供に仏教輪廻を教え、庶民の生活倫理を、知らない間にいつしか身につける絶好の機会だったでしょう。目に一文字の学がない親に育てられても、社会にはこんな仕掛けがあったのです。

夏祭りの山車をみても、大江山の酒呑童子や、平家源氏の合戦やら、楠正成の泣き別れや、歴史のヒーローたちが活写されており、町内の皆で一緒に神輿を担ぐ祭りの中でも、次代の子ども達は、自然に歴史感覚を身につけてゆく仕掛けがあったと、以前、山車を見ていて気がついて驚いたが、山里のひしゃげた神社に難しい和算が解けたという感謝の絵馬がぶら下げられていたり、社会のさまざまなところに、たくさんの知恵と仕掛けがちりばめられていた日本社会そのものが、一つのワンダーランドだったような気がする。

授けられた今年の福がどんなものか知らないけれど、来年も神社仏閣の初詣に、あの雑踏の中をみんなで歩いていれたらいい。と思っている。

「招福の破魔矢をゲットしてご機嫌!!」 撮影斎藤

「招福の破魔矢をゲットしてご機嫌!!」 撮影斎藤

 

 

 

 

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 初詣は、確かに正月休みのワンダーランドですね。
    私も、毎年1月1日、清荒神、中山寺へ参拝しております。
    中山寺の由緒がわかり、又新たな気持ちで参拝したいと思います。